2013年3月17日 リーダーシップの顔
たかがミーティング、されどミーティング
私が米国に住み始めたのは二十年前。日系および米系の企業に勤務後、日米のエグゼクティブへの異文化トレーニング/コーチングをして十五年になります。最初の十年は、「日本のスタイルが欧米のものと違うからといって、効果的でないとは言えない」という思いがありました。しかしこの数年は、リーダーシップのある日本人ががまだ少ないことに、危機感を抱いています。
「リーダーシップって何ですか?」
と質問すると、リーダーの人柄を答えとしてあげてくる日本人が多いのですが、リーダーシップは人柄ではなく、むしろ行動内容です。ただ、一口にリーダーシップといってもいろんな側面があるので、この質問に一口で答えるのはとても難しいのも事実です。
そこで、このコラムでリーダーシップのいろんな顔を紹介したいと思います。読んでいただいて、共感のもてる「リーダーシップの顔」を見つけたら、ぜひその「お面」を被ってみてください。リーダーシップもスキルの一つです。習って、実践するうちに自分のものになります。このコラムが、みなさんのリーダーシップ・スタイルを築き、広げ、向上させていく上でのご参考になれば幸甚です。
“Fail-safe Leadership” の著者は、リーダーを「ゴールを設定して結果を出せる人」と定義しています。この定義に従うと、どんなに信望のある人でも、どんなに経験を積んだ管理者でも、自分自身やチーム、部下をゴール達成に導けなければ、リーダーとは言えません。リーダーとしての資質を斟酌せず、結果だけで判断するというのは厳しいですし、そんなことでは本当のリーダーを発掘して育てることができないのではないかと、心配になってきます。
けれども、結果を出せる人をリーダーすることで、適材適所のリーダーが生まれます。ですから企業の活性化を考えると、リーダーを「ゴールを設定して結果を出せる人」と定義することに大きなメリットがあります。
また日本人は、リーダーシップを発揮するためにはリーダーの立場になければいけない、と考えがちですが、誰もが自分の業務または職場でリーダーシップを発揮すべきだ、というのが欧米の考え方です。
さて、Fail-safe Leadership では、リーダーシップの弱い企業の特徴として二十の項目が挙げられています。その上位三位は、過剰なミーティング、思慮深いコンセンサスによる意思決定(責任回避)、そして個人の説明責任(accountability)の欠如。つまり、日本企業にありがちな状態が、「リーダーシップの欠如している状態」だということです。
この十年、ビジネスに求められるスピードは加速しています。ミーティングを必要なものに限り、またその時間を短縮するには、自らの意見を早い段階で明確にすること、そして物事の内容によっては、コンセンサスにこだわらないリーダーシップが必要です。
また、「君(または特定のグループ)に任せるよ」と、部下やチーム・メンバーを信頼するリーダーシップも有効でしょう。その上で、説明責任(accountability)を負い、互いに要所要所で進捗を確認することも肝心です。
また、確認の再確認を避ける、思い切った発言に肯定的に反応するよう心がける、といった合意を部下や同僚との間に作り、実行してみるのも一つの方法でしょう。これを組織全体に徹底すれば、ゴール達成への時間の無駄を省けます。
どの企業にも優秀な人材はいますから、時間さえあれば、ゴールの達成そのものはそれほど難しくないのです。鍵は、そのゴールにどれだけ早く到達するかです。そのためのヒントを、Fail-safe Leadership は提供してくれます。
推薦図書
Fail-safe Leadership by Linda L. Martin and David G. Mutchler
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